冬期、脂が乗っていてとれもおいしい大衆魚といえば、やっぱり寒サバと呼ばれるマサバでしょう。このマサバは、伊豆諸島周辺海域で、「たもすくい漁」という漁法で獲られ、長井港や三崎港に水揚げされています。東北海域でたくさんの餌を食べて南下してきますから、丸々と太って脂が乗っているわけです。
たもすくい漁とは、夜間にマサバの群れを見つけ、まき餌をしながら直径1メートルほどの網でどんどんすくっていく漁法です。多い日には一隻あたり20トンも漁獲され、漁師一人当たりにすると、一晩で約2トンも捕っていることになります。
1970年代後半、たもすくい漁を行っていた漁船は神奈川、千葉、静岡の三件で100隻以上に上りました。しかし、現在では県内の4隻を含め5隻のみです。このような珍しい漁法を守っていくには、県民にこの時期、まさに旬の寒サバを食べていただくことで、消費ニーズが高まっていくことが必要でしょう。
食べ方は、やっぱり塩焼きが最高です。三浦半島で取れた大根を使って、おろし醤油で食べるのが一番です。
文・嘉山定晃 / 「おさかなマイスターのちょっとおいしい話」(2012.2.8)