長井水産

カツオ

2つの旬を楽しんで

 カツオは古くから食され、江戸時代には「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と俳句に詠まれました。粋な江戸っ子は初鰹を珍重し、「女房質に入れても初鰹」とまで言われるほどでした。
 今でも大衆魚として親しまれ、初鰹に戻り鰹、1年に旬が2回あるものも特徴の一つです。
 日本近海のカツオは西部太平洋の熱帯海域で生まれ、約一年で初鰹(尾叉長45センチ)として伊豆諸島近海に来遊し、神奈川県内でも鮮度のよいものが水揚げされます。4、5月の初鰹は初物として赤身を楽しめます。
 その後、三陸沖に餌を求めて回遊していきます。秋に55センチ程度に成長し、戻り鰹として産卵海域である熱帯海域を目指して南下します。9〜11月の戻り鰹は三陸沖でたくさんの餌を食べて太り脂が乗っています。
 このような回遊過程から初鰹と戻り鰹では異なった味を楽しめるわけです。県内では三陸沖から南下してきた戻り鰹が相模湾で漁獲され、最高の鮮度の戻り鰹を賞味することができます。
 丸ごと一尾を購入する場合、背中の後方にある青紫色のらせん状の模様がはっきりしているかどうかで鮮度を見極めています。魚体全体に丸みがあり、「ずんぐりむっくり」という感じの太ったものを選ぶとよいでしょう。
 柵(節)での購入の場合は、赤身が鮮やかで血合いが黒くなっていないものを選びます。雄節(背)と雌節(腹)では、赤身を楽しむなら雄節、脂なら雌節がお勧めです。

文・嘉山定晃 / 「おさかなマイスターのちょっとおいしい話」(2011.8.3)